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イサム少年とチャリ “鎌倉は遠かった” の巻

イサム少年とチャリ
“鎌倉は遠かった”の巻


ある晴れた日、僕はちょっと遠出をしようと思い立った。

鎌倉にある親戚の家にチャリで行き、叔母を驚かせようと企んだのだ。
記憶をたどると暑かった気がするので恐らく季節は夏…
夏休みか何かだろう。

「いきなり一人で訪ねたら叔母ちゃん驚くだろうなぁ。しかもチャリだし」
なんて考えながらペダルを漕ぐ。

鎌倉までの道(ルート)は…分からない。

分からないけど、行けば分かるだろうという安易な考えで走りだした。
ほどなくすると、横浜↑、鎌倉←と書いた道路表示板を見つけた。
よくある青い表示板だ。
「ほらやっぱりこっちだ」とテンションも上げつつ表示に従って進んだ。

祖母と一緒に鎌倉までよく行ったものだが、我が家には自動車というものが無かった。
したがって電車で行く事が常だったが、ときおり鎌倉の叔父の車に乗せてもらい行く事もあった。
その時の記憶を頼ったのかもしれない。

「順調、順調!」その後もいくつかの表示板に従い鎌倉を目指した。
小一時間ほど走って、僕的にはもうそろそろ鎌倉に着くのではないかと思った頃、道は上り坂にさしかかった。

「坂かぁ」
暫く頑張って漕いだが、立ち漕ぎもそういつまでも続けては居られない。
僕はチャリを降りて押すことにした。

まあ、ちょっと登れば下り坂になって海とか見えてそこは鎌倉かなぁ…。
青い海を思い浮かべる。
そんな希望を胸にチャリを押す。

ところがである。
下から見て上り坂の終点だと思っていた場所…。
実は、そこは急なカーブになっていて、その先が見えなくなっていただけだった。

そして、そのカーブを曲がると…
なんと更に長い上り坂が続いているではないか。

しかし、ここでも持ち前のポジティブシンキングを発揮して、
”あのずっと向こうに見えているあの場所”こそが頂上に違いない。
そう信じてチャリを押す。

その頃になると腕も足も疲れて来て、例の巨大なフラッシャーの重みがズシリとこたえ、
普通に漕いでいる時の何倍にも重く感じる。

チャリを押す。

しかし、そここそ頂上と信じたその場所は…
またしても同じような急なカーブだった。
もういいかげん、ここらで引き返せばよいものを、
途中で引き返すという事を知らないイサム少年であった。

チャリを押す。

更に何回もこの“上り坂からの急なカーブ”を繰り返す。
時折車は通るが、歩いている人なんて一人もいない、
ましてやジュースの自販機などはもっての外である。
暑くて喉が乾いた。
時刻も夕方に近くなってきた。

急に心細くなってきた。
「オレは一生この坂道でチャリを押しつつ登り続けなければならないのではないだろうか?」
まさに“坂とカーブの無限回廊”のように感じた。

イサム少年の家のまわりも坂道は多い。
しかし、ちょっと登ればすぐ下りになるような坂道が大半で、
こんなに登っても登っても頂上に辿り着かない坂道は生まれて初めてだった。


帰ってから、そのつづら折りの道は朝比奈峠という峠道だと知った。


さて、肝心な鎌倉に到着したかどうかだが…。
それが、どうにもこうにも思い出せないのだ。

ただ思い出すのは、暑く果てしない上り坂を重いチャリを押し歩いたことだけだ。

どうやって家に帰ったか?
思い出せない。
ワープでもして帰宅したのか…

“坂とカーブの無限回廊”の記憶は不完全ながら鮮明に僕の心に残っている。






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イサム少年とチャリ④ “憧れの代償は重かった!”の巻

イサム少年とチャリ
“憧れの代償は重かった!”の巻

憧れのアストロGこそ手に入らなかったが、
僕のエレクトロボーイZも負けないくらい
派手なフラッシャーが付いていた。

当然のことながら電源は乾電池で、
今ではほとんど使わなくなった単1という
巨大な乾電池をたしか6本も使っていたと思う。
機器の重量に加え乾電池の重みも加わり
かなりな総重量になった。

僕の住む家は少し高台になっている。
車の通る道から路地に入り、
そこから更に階段や坂道を登らなければならない。

買ってくれることの条件に、
その辺に路駐しないで
ちゃんと家に保管する事っていうのがあった。
だから、乗った後は毎回その階段や坂道では
チャリを押して、あるいは持ち上げて家に運ぶのだが、
これが一苦労。
この時ばかりは、「もう少し軽く出来ないものかね!」
ってなこと呟きながらこのデカくて重いフラッシャーが
ちょっと邪魔に感じてしまったものだ。
あれだけ憧れていたフラッシャーなのに、
勝手なものである。

そして当然、バランスも悪くなるのでよくこけた。
まあ、自転車に乗る経験もまだ浅いから
単なるヘタクソってのもあるが、
何しろチャリの上部が重いので
重量バランスが悪く、兎に角よくこけた。

そして、度々「ガッシャーン!」という派手な音とともに
横倒しになりフラッシャーの一部が欠けて
パラパラっと路面に散らばった。

シッ○!であるオーマイガー!である。

大きな欠片は拾って接着剤でくっ付けたりしていたが、
半年もたつとあちこち欠けてエレクトロボーイZではなく
エレクトロボローイZになってしまった。
トホホ。。。

フラッシャーが欠けて行くたびに、
心にもぽっかりと穴のあく思いをするイサム少年であった。


(^-^)v





イサム少年とチャリ③  “ヘンテコなハンドル”の巻  その2

イサム少年とチャリ
“ヘンテコなハンドル”の巻 その2


先輩のアストロGも僕のエレクトロボーイZも、セミドロップ・ハンドルというハンドルがデフォルトで付いていた。

セミドロップ・ハンドルというのは、最近あまりお目にかからないがドロップ・ハンドルのセミ版ってことなのだ。
だから「若干ドロップ」というか「ややドロップ」ってことで…
そもそもドロップ・ハンドルというのはだなぁ…(汗)。
ググってくれたまえ~!

さて、話を先輩のハンドルの角度に戻すと、そのセミドロップ・ハンドルが60度くらい前倒しに付けてあるのだ。
つまり、チャリを横から見て本来水平に後方を向くはずのグリップの端が、ぐぐっと上にそそり立つようなヘンテコな角度。

その(ヘンテコな)ハンドルどうしたんですか?と先輩に尋ねると
「ホントはチョッパーにしたいんだけどね…」と言いながら、
ハンドルを高い位置で構えるような仕草をする。

チョッパーって言うのはイージーライダーのハーレーのように高い位置にグリップがくるようなハンドル。

そこで、先輩は少しでもチョッパーに近づくようにアストロGのハンドルの角度をグリップが上を向くように付け変えていたのだ。
 
それを見た僕は…

あろうことか「カッコ良いー!」と思ってしまったのだ。

翌日から僕のエレクトロボーイZのハンドルもヘンテコな角度になっていたのは言うまでもない。

イサム少年あさはかである。
 
その後も、柔道の日は3人つるんでヘンテコなチャリを走らせ、
「このチームでスカジャン作ろうぜ!」
「サドルもバナナ・シートにするぜ!」
などなどチャリやチームの話で盛り上がった。

実際にスカジャン作ったりは出来なかったけど、こづかいの範囲でなんとか出来るような、「パフパフ鳴るラッパ」や更に「赤や緑の電飾」を付けたり自分なりに改造して楽しんでいた。

その後、先輩が本物のチョッパーを付けたかどうかは定かではないが、今思うとあのヘンテコに角度を変えたハンドルはめちゃめちゃ運転しづらかったなぁ…(笑)。

危なっかしくてしようがないぞイサム少年!

(^-^)v





イサム少年とチャリ ③ “ヘンテコなハンドル”の巻  その1

イサム少年とチャリ
“ヘンテコなハンドル”の巻 その1


親を拝み倒して手に入れたフラッシャー付き自転車“エレクトロボーイZ”は、当然のように毎日乗りまくった。
嬉しくて嬉しくって街へ海へ山へとあちこちペダルを漕いだ。
 
そして、いよいよ柔道の日。
僕は新しくてピカピカ(電飾もピカピカ)のチャリで先輩達と合流して道場へ向かう。

この頃になると先輩の家の隣に住む1つ年下の後輩も一緒に道場に通っていたので、チャリを導入した僕も含め3人はつるんで走った。
「イェーイ!!」
友達とつるんで走るのは一人で走るよりも、めちゃ楽しかった。

僕等の住む上町(うわまち)の辺りから道場のある下町(したまち)の方に行く道のりは、1箇所ヘアピンカーブになっているような、ちょっとした峠道のような道を通っていくのだが、往路は下り坂になっていて、漕がずしてスピードに乗れるので3人とも我が物顔で走った。

丁度その頃流行っていた仮面ライダーの主人公がバイクに乗るように、やや前傾姿勢になり険しい顔で風を切った。「今のオレって超カッコ良いかも!」なんて思いながら悦に浸っていたものだ。帰り道は上り坂になるのでチャリを押し歩かねばならなかったが…。

 
そんなある日、先輩のアストロGのハンドルの角度がヘンテコになっているのに気付いた。

「なんじゃあれ!」

イサム少年、目がまんまるくなるのであった。

( ゚д゚ )








イサム少年とチャリ②  “憧れのアストロG”の巻  その3

イサム少年とチャリ
“憧れのアストロG”の巻 その3


神様もそう易々とは憧れのアストロGを与えてはくれない。
 
うちの親は小さな和菓子屋を細々と経営していたのだが、
その商売上のお付き合いのある自転車屋さんから購入するなら良いということになった。

当初僕は、そんなの全然OKへっちゃらだよ~何処で買おうと関係ないもんね~!
といい気になっていたのだが、そのお付き合いのある自転車屋さんというのは
ナショナル自転車のお店ということらしい。
ふーん。
ん?ナショナル?あのテレビとか電池とかの?

後日、親がその自転車屋さんに確認してくれたところ、
そこにアストロGは…ナイということだ。

ふーん。。。
 
え? 

無いーっ!!

それじゃ僕の憧れの“アストロ”は? 夢の“G”はどうなっちゃうの??

ボボ・ブラジルのジャンピング・ヘッドバットを喰らったジャイアント馬場のように膝から崩れ落ちた。
「おぷしっ!ぽぁ~!」(←馬場のうめき声)

結局ブリジストン自転車である“アストロG”は入手不可。
そのお店ではナショナル自転車のみ取り扱っているのだ。
なんという…。
「さよなら“憧れのアストロG”」
「今まで楽しい夢が見れたよ…」
 
親父になんでこのお店じゃないとダメなんだよー?
って若干キレ気味に訊いたところ
「ここなら月賦で売ってくれるからだ」と教えてくれた。

当時5~6万くらいしたその自転車。
裕福でもなんでもないのに、いやむしろ貧乏だったのに…
そんな高価な自転車を一つ30円ほどの和菓子をぽつぽつ売りながら月賦で支払って
こんなバカ息子に買い与えてくれた親には感謝しかない。

そして、そんなバカ息子な僕のところに来た自転車が“エレクトロボーイZ”だ。
“アストロG”は手に入らなかったけど同じ様に5段変速でフラッシャー付きだ!
これからよろしくな!“エレクトロボーイZ”!

エレクトロボーイz
エレクトロボーイZ

(^-^)v




プロフィール

瀧田イサム

Author:瀧田イサム
瀧田イサム オフィシャル・ブログへようこそ!

8月8日生まれ、神奈川県横須賀市出身。
中学の頃にベースを始め数々のバンドやセッション活動、アーティスト・サポート等を経て1995年には六三四Musashi、2002年にはアーク・ストームに加入し、テクニカルかつ流麗なプレイで辣腕を振るう。
並行してGRANRODEOやMinamiのサポート・ワークでも精力的に活動している。
2015年12月にはデビュー20周年にして初ソロ・アルバム『Rising Moon』をキングレコードからリリース。
2016にはJeff KollmanのJapan Tourにも参加。
使用楽器はコンバット製TAKITAモデル6弦BASS

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