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イサム少年とチャリ⑦ “噂のトンネル”の巻

イサム少年とチャリ⑦
“噂のトンネル”の巻

最近のチャリはめったにチェーンが外れたりしないよね。
これも技術の進歩なのでしょう。
時代は令和になりつつありますが、平成をジャンプして
昭和の時代のチャリは今と違いよくチェーンが外れたものだ。

特に僕の乗っていたエレクトロボーイZのように、変速ギアの付いているタイプは、何かっちゅうとチェーンが外れた。
チェーンが外れると、にっちもさっちも行かなくなるので、その場で自分で直すしか方法はない。
チャリの横にしゃがみ込み、手を油でベトベト真っ黒によごして修理しなければならなかったのだ。
でも今はめったにそんな事にはならないのでいい時代だね!

さて、話は僕が少年だった昭和の時代に戻ります。

どういう経緯(いきさつ)からだか思い出せないが、
僕はまた鎌倉にチャリで行こうと思い立った。

“鎌倉は遠かった”で書いたように、
鎌倉に一人チャリで行こうとしたときには
峠の無限回廊でエライ目にあったイサム少年だったが、
同じ轍は踏まないのだ。

ということで今回は隣にすむ同級生O君を誘い二人で、しかも峠がないであろう逗子を通るルートで行くことにした。
これで辛い思いをせずに、青い海と大仏と鳩サブレーに会えるぞ!
と意気込んで出発したのだった。

ん?でも、なんで鎌倉なのだろう?
大仏と鳩サブレーはおいといて、海なら横須賀にもあるし…
チョット足を伸ばせば三浦の綺麗な海も堪能できる。

今思い返すと、僕の住む所から三浦方面へは、海沿いの幹線道路1本で比較的楽勝に行けるので、当たり前のように何度もチャリで遊びに行っている。
ところが、西海岸側の逗子鎌倉方面ヘはコレだという分かり易い道もないので馴染みが薄いのだ。
その分、イサム少年の冒険心を煽ったのだろう。

僕等はまたしても前調べもせずに、行き当たりばったりで出かけた。

でも今回は前回のような峠地獄も無く極めて順調に逗子を抜け、あと少しで鎌倉というところまで辿り着いた。

その時、前方にトンネルが見えた。
「トンネルか…峠より良いや」
っと思った次の瞬間、僕は先日見たテレビ番組を思い出して
ぞーっとした。

その番組とは心霊写真や心霊スポットを紹介するような番組だったのだが、逗子と鎌倉の間にある有名な“幽霊トンネル”の事が恐ろしげに紹介されていた。
今、まさに目の前にあるこのトンネルではないか!

海、大仏、鳩サブレーなどで一杯だった僕の頭の中は一瞬にして、「霊魂」とか「怨念」とか「幽霊」などのおぞましいワードで一杯になってしまった。

「O君!こっ、ここは…」
一人でモヤモヤするのはめちゃ怖かったから、O君に目の前のトンネルのことを言う事にした。
僕はテレビで見た内容をざっと話した。

怖かったから話したんだけど、話すと内容を思い出してもっと怖くなった。
僕とO君は引き攣った顔を見合わせて
「どうする…」
目の前には不気味な“幽霊トンネル”があんぐり口を開け僕らを見据えている。

ホントは僕もO君も、一目散に家に帰りたかった。
でもここまで来たし、少年特有の強がり精神も発揮して、僕等は恐怖心をなんとかねじ伏せ、トンネルを越え目的の鎌倉を目指す事にした。

僕とO君は一列になりそのトンネルに進入した。
ひんやりしたその内部は、何もかもが今までとは違った。
音、光、臭い、空気の感触…
ゾワーッ
僕らはローストチキンのように鳥肌を立ててチャリを漕いだ。
O君も必死である。
倍速ビデオのようにペダルを漕いでいる。
めちゃ速い。
僕も置いて行かれないように全力で漕いだ。
そして、変速ギヤを5速に入れようとレバーを動かす。

と、その時。
ガチャン!!

僕のチャリのチェーンが外れた。
場所はトンネルのほぼ中央だ。
「ヤッベ!」
「オーーーイオーイ!Oくーん!!」
「マッテー!!!!」
トンネル内にこだまする。
渾身の力で叫ぶも空しく
O君の姿はどんどん小さくなる。

真っ白い出口の光に向かって猛烈にチャリを漕ぐO君の姿は
今も脳裏に焼きついている。

僕はというと、半泣きになりながら
半ケツになってチャリの横にしゃがみ込み
怨念と幽霊と、背後を容赦なく通り過ぎる自動車に
びびりながら、やっとの事でチェーンを直し
猛ダッシュで出口に向かったのであった。

トンネルを出てきた必死の形相の僕を見て
O君は腹を抱え大笑いしていた。

「なんで待ってくれなかったんだよー!」
「マジで怖かったんだぞーっ!」
キレたり泣いたり笑ったりしながら
僕等はペダルを漕いだ。

鎌倉はもうすぐそこだ。



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コメント

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最近の楽しみ

車でいうところのエンストみたいなものでしょうか。
昔、雑誌の懸賞で当てたマウンテンバイクで、よくチェーンはずれて直しました…
ギア変えた直後のひと漕ぎ目はビクビクしながらでした(-_-;)
何も出なくて良かったですね。
ナニカガ ツイテキタリハ シマセンデシタ?

イサム少年の日記(事件簿?)
最近の楽しみであり癒しです!

ビックリしました!

お話、迫力があってドキドキしちゃいました!
そうですね、多段変速、とにかくよくチェーン外れました。とくに発進時。
チェーン外れるのが怖くて、段々ギアを固定していたなぁ(笑)
今後もイサム少年の冒険、楽しみにお待ちしています!
プロフィール

瀧田イサム

Author:瀧田イサム
瀧田イサム オフィシャル・ブログへようこそ!

8月8日生まれ、神奈川県横須賀市出身。
中学の頃にベースを始め数々のバンドやセッション活動、アーティスト・サポート等を経て1995年には六三四Musashi、2002年にはアーク・ストームに加入し、テクニカルかつ流麗なプレイで辣腕を振るう。
並行してGRANRODEOやMinamiのサポート・ワークでも精力的に活動している。
2015年12月にはデビュー20周年にして初ソロ・アルバム『Rising Moon』をキングレコードからリリース。
2016にはJeff KollmanのJapan Tourにも参加。
使用楽器はコンバット製TAKITAモデル6弦BASS

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